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2014年12月24日

ロスト・ケア

「ロスト・ケア」は、2013年、老人介護を扱った犯罪小説で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。選考委員の綾辻行人は「掛け値なしの傑作」、今野敏は「文句なしの傑作」と評し、満場一致での受賞となった小説。

暗い話である。介護に追い詰められていく家族、正義にしがみつく偽善者、介護保険制度の欠陥、富者と貧者、社会の中でもがき苦しむ人々の絶望。

むかしも今も、老いや病、貧困は文学のテーマである。いや、人間にとって避けることのできない問題である。若いころ読んだ、深沢七郎の短編小説「楢山節考」を思い出した。山深い貧しい部落の因習に従い、年老いた母を背板に乗せて真冬の楢山へ捨てにゆく親思いの息子。自ら進んで「楢山まいり」の日を早める母親。

耄碌して人間らしさを失ったとき、病によって廃人となってしまったとき、人間としての尊厳はあるのだろうか。それはいったい何なのだろうか。観客の多数は、クリント・イーストウッドが主演・監督した映画「ミリオンダラー・ベイビー」の結末に共感できたのだろうか。

そんな取りとめもないことを感じた小説だった。つまり考えさせられたということ。




映画「ミリオンダラー・ベイビー」
 97人が星5っ

蛇足だけど、深沢七郎の短編小説「楢山節考」について少し書いておきたい。

母親であるおりんが生きる村には、姥捨てという掟があった。姥捨ての楢山へ到着したときに雪が降れば運が良いとされた。年を取っても歯が全部残っていることは恥ずかしいことであり、楢山へ早く行くことが山の神さんにほめられることなのだ。

楢山節考は、一見、老いと貧しさの問題を書いているように思えるが、それよりも深い問題を提起していたように感じる。それは死、あるいは死にかたというか、遺された人たちの手を煩わせないで、世の中から消えるように静かに逝きたいという思い。おりんはそう願っていたのではないだろうか。最近において、商業ベースの葬儀に疑問を持つ人も多くなってきた。墓も葬儀も戒名も不要。

深沢七郎は、「姥捨伝説」を山梨県境川村大黒坂の農家の年寄りから聞き、それを肝臓癌を患った実母・さとじの「自分自らの意思で死におもむくために餓死しようとしている」壮絶な死に重ねながら、老母・おりんと息子・辰平という親子の登場人物を創造したという。

参考:「楢山節考」あらすじ


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