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2011年07月25日

バッテリー(小説)を読んだ

今さらながらですが、ベストセラーになり映画にもなった、あさのあつこさんの「バッテリー」を読みました。原田巧という小学6年生の天才少年が主人公の小説です。

彼は、父親の転勤に伴って、広島と岡山県の狭間にある小さな町・新田市の母の実家に引っ越してきます。その彼の前に4月から中1になる巧と同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望します。巧に対し、豪はミットを構え本気の野球を申し出るのです・・・

この小説は、普通のよくあるスポ根や青春小説ではなくて、少年たちを通して才能、努力、出会い、友情、思いやりとは何かを表現している大人も読める小説(だそうです)です。おそらく、作家が言いたいことは、特別な才能を持つ者がこの世にはいつもいる、神々に愛された者たちである。いくら努力しても彼らにはかなわない。だから、努力する必要が無いなんて思わないが、それは厳然とした事実なんだ。もちろん、特別な才能を維持し発揮するためには真摯にそれなりの努力も必要である。

原田巧は自分を特別なものと考えてストイックと言えるほど一途に野球に打ち込む。しかし、その態度は不遜である。そんな彼を中心に彼の両親、祖父、弟、捕手の永倉豪たちを脇役にお話は進んでいく。



一読後、面白いところもある小説だと思ったが、なぜあれほど騒がれたのかがもうひとつ分からなかった。途中で何ども主人公の原田巧って嫌な野郎だなと思ったことか。それは読み終わった後も変わらなかった。

この主人公のイメージは江夏豊。捕手の永倉豪は田淵幸一を連想させた。とにかく、彼は特別な才能を持っているが、協調性のない、人の心を思いやることができない嫌な奴なのである。脇役たちももう一つ好きになれない。主人公に向かって生意気だって言う江藤って奴の気持ちがわかる。そういう意味で、この江藤ぐらいが一番普通の人間だと思った。

作者はなぜ、特別な才能も持たず、それでも自己を律し真摯に生きていこうとするものを描かなかったのだろうか。あとがき(三浦しおんさん)の中で、誰もがアインシュタインやオリンピックの金メダリストにはなれない、特に目立った才能を持たずに生まれた人が大多数なのだと書いている。そのとおりだ。それが現実だとすれば、なぜ、特に目立った才能を持たずに生まれ、それでも一所懸命に生きていこうとする者たちを描かないのだろうか。

当時は、ロッキーとかあしたのジョーとか、努力、努力のスポーツドラマが蔓延していたのだろう。それに学校が管理教育で、子供たちが規則、規則でがんじ絡みにされていたのだろう。そのような状況において、作者はこの作品で、おとなたちの強制や誘導を拒否し、平等とか協調とか仲間とともに、というテーゼに反対を唱えたかったのかもしれない。そしてそれが、多くの人に受け入れられたのかもしれない。それはそれで良い。でも、そんな狙いがあったとしても、この続きを読みたいとは、わたしは思わない。わたしは「かもめのジョナサン」を良い小説とは思っていないのだから。

TB:
http://tururi.sekken.be/2007/06/post_239.shtml
話題の小説「バッテリー」を読んだ(2007年06月02日)

そうか、そういう読み方もあるんだ。50代寿司職人の物語・・・「バッテラー」・・・。
面白い見方で文章もよくって感心しました。でも、そういうことを作者が伝えたいのなら、別に主人公は天才ピッチャーでなくてもいいんじゃない。才能無くても楽しく一所懸命に何かに打ち込んでいる奴って結構いるもん。
でも、この小説はそれを否定しているところからスタートしているように読めるんだけど...


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