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2013年03月01日

日本人を守る最後の戦い

戦いにおいて一番難しいのは退却戦でなかろうか。負け戦で戦意が喪失している軍主力を守りながら、迫撃する敵に応戦しつつ、退却するというのは大変な任務である。ともすれば、恐怖心で総崩れになるのが普通のことだろう。

1945年(昭和20年)8月20日、日本が連合国に敗れた後、内蒙古に取り残された4万人の邦人を保護し、内地に帰国させるという奇跡を起した軍団がいた。関西地域の出身者で構成された独立混成第二旅団、その名を響兵団という。

本格的な国共内戦がはじまっていた中国で、ソ連・蒙古軍の迫撃を受けながら4万人の邦人を如何にして祖国に帰還させたのか。多くの人の知恵と自己犠牲によって成功させたこの脱出劇、それを可能にさせたのは同胞愛であったにちがいない。

わたしが一番印象に残ったのは次のエピソードである。下記の書籍142ページ。張家口の40キロ東南、宣化の駅構内での八路軍との戦いである。極めて少数の鉄道守備隊、隊員6名と宣化の病院にいた病兵15,6人が引揚げの日本人を満載した列車20本ほどを守った逸話である。

八路軍は、その後も何度か、襲撃して来た。山本軍曹らの”病兵分隊”は、疲れ果ててしまった。
「射ち合って二日目、二十二日の昼ごろ、八路軍は、また襲撃して来ました。もう持ちこたえられん、退却しようと決めたときのことです。
後方の引込線の貨車から降りて来たのでしょう、五つか六つのイガグリ頭の男の子が、近づいて来るんですな。大きなカバンをひきずるようにして、小走りに走ってくる。その子を目標にしたんでしょう。八路軍の迫撃砲弾が、子どもの周囲に炸裂する。思わずその子を横抱きにして、窪地にとびこみました」
男の子のカバンの中には、焼いたおムスビが、十五、六個入っていた。
「兵隊さん、これ食べてがんばって下さい」
山本軍曹の顔は、涙とドロで、目の下がまっ黒になっていた。.....


以上はひとつの逸話にすぎない。満州や南樺太の惨状と比べる気持ちはないが、この内蒙古引揚者の保護脱出の歴史は日本人として知っておいたほうが良いだろう。軍の本質は、国民の、邦人の保護にある。この書籍はそういうことを教えてくれた。

関連:
昭和20年8月20日 日本人を守る最後の戦い―四万人の内蒙古引揚者を脱出させた軍旗なき兵団


この書籍の末尾に、著者は「張家口に集結した四万人近い日本人の、奇跡の脱出成功のかげに、丸一陣地で、戦死、戦傷死、あるいは苦難の撤退の際に力尽きて落伍し、自決したと思われる尊い犠牲者、さらに鉄道沿線警備などに倒れた兵士があったことを、永久に忘れてはならないであろう」と書き、せめて判明している氏名だけをここに掲載することをお許しくださいと書いて、筆を置いている。

和歌山県人では5名。その所属、氏名そして階級が記されている。あなた方の尊い犠牲に同じ県人として深い敬意と感謝を表しこころからご冥福をお祈りします。


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