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2014年07月17日

生物学上の父子関係

自分の娘と思って大切に育てた。おしゃぶりを口にして振り向く姿、あどけない寝顔、食事をほおばる姿…。

平成21年に娘を授かったが、出産直後の妻が泣きながら言った言葉は「ごめんなさい」。父親が自分ではないことを告げられた。ショックだったが、子供の顔を見るとすぐに愛情が芽生えた。自分の子として育てることに迷いはなかった。

子供の命名や出生届の提出など、慌ただしくも幸せな日々が過ぎていった。早く顔を見たい一心で、仕事に励んだ。帰宅した男性を見つけると、娘は「わーっ」と声をあげて駆け寄ってきたという。

しかし、口論が続くようになり、妻は1歳2カ月の娘を連れて家を出ていった。最後の夜、風呂上がりの娘に初めて「パパ」と呼ばれた。「やっぱり娘は分かってるんだなと思った」と男性は振り返る。別れの朝、「バイバイ」と語りかけると、娘は笑ったような、泣きそうな顔で小さな手をクルクルと振った。涙が止まらなかった。

妻とは離婚が成立。娘はDNA型鑑定で生物学上の父とされた男性とともに暮らし、会えないままだ。男性は娘と過ごした日々を「なかったことにはできない。父親としての権利を奪われることに納得がいかない」と話し、続けた。「僕の所に娘が生まれてきたのは運命だと思っている」

今日、最高裁はこの男性の主張を認めた。夫以外の男性と子供の血縁関係がDNA鑑定で証明されても戸籍上の父との親子関係を取り消せない。民法が「婚姻中に生まれた子供は夫の子とみなす」とする「嫡出推定」の規定がDNA鑑定に優先したのだ。

最高裁は、「法律上の父子関係と生物学上の父子関係が一致しない場合が出てくるが、民法の規定はそれを容認している」と判断した。妥当かどうかはわからない。でも立派な判断である。親子関係とは何なのか、同一性障害で戸籍上の性別と実質を異にする人のケース、人工授精で生まれたわが子。「血縁だけで決めるなんておかしい」という叫び声が聞こえる。

少し前に泣きの浅田次郎の名作、椿山課長の七日間を読んでいたので、余計に感情移入させられた。



今般の最高裁の判断に基づき、別れた時より少し大きくなった娘さんにとっても、実の父と母から離れること、それもつらいことだと思う。もともとの育ての父の元に戻ることになっても、幸せになれるのかどうか、それはわからない。子供にとっていずれが幸せか、ほんとうのところ、誰にもわからないと思う。

情報源:
「血縁だけで決めるなんておかしい」 父子関係訴訟、変わらぬ愛情胸に判決待つ男性  


Posted by ecell at 18:23Comments(0)法律学習

2014年06月12日

育ての父

昨日の朝鮮日報(2014/06/11 11:32)の記事に考えさせられた。


「育ての父」の情、日本を揺るがす

「妻の浮気で産まれても私の子、法は愛情までは奪えない」
婚外子と知らず育ててきた男性、DNA鑑定後も親権訴える
「生物学的親子関係だけを認めるべき」「血縁だけなら養子の立場は?」日本で論争


「育ての父」の情、日本を揺るがす
 「子どもの父親は明らかに別の人物なのだから、親子関係は無効だ」(妻側)

 「1年以上、情を掛けて育ててきたのに、血縁関係だけをもって父親の地位を奪うのは酷だ。」(夫側)

 日本の最高裁判所の法廷では9日、離婚した夫婦の間で非常に珍しい弁論が繰り広げられた。女性はDNA鑑定の結果を基に「元夫と子どもの親子関係は無効だ」と主張し、男性は「私の子どもを奪われることはない」と対抗した。日本のメディアは「家族関係に根本的な疑問を投げ掛ける法廷争いだ」としてこの裁判に注目している。

 北海道に住む女性は2009年、夫以外の男性と関係を持ち、子どもを出産した。夫はしばらくの間、疑ったこともあったが、出生届を出して子どもを妻と一緒に育ててきた。結婚10年目にできた子だったため、いっそう特別な思いだった。しかし翌年に離婚、妻がDNA鑑定の結果を根拠に法律上の親子関係を無効にするよう求める訴訟を起こしたことから、長い闘いが始まった。

 DNA鑑定では「子どもの父親が元夫以外の男性である可能性は99.99%」という結果が出た。妻はこれを根拠に、一審と二審で相次ぎ勝訴した。しかし、夫は諦めずに上告した。子どもへの愛情があったからだ。夫は「DNA鑑定が事実だとしても、子どもとして育ててきた愛情をなかったものとすることはできない」「わが子の名を呼び、一緒に風呂に入り、パパと呼んでごらんと言った思い出まで消えることはない」「別れた日、今にも泣きそうな顔で手を振っていた子どものことが忘れられない」とも述べた。子どもへの愛情は変わらないのだから、親権も放棄できないということだ。

 この夫婦の法定での争いが最高裁まで至ったことから、日本では「DNA鑑定で父子間の血縁関係がないことが証明されれば、戸籍上の親子関係を取り消せるのか」と一大論争が巻き起こっている。

 「幼い子どもに父親が二人いるという状況は過酷で、生物学的な親子関係を否定すれば、結果的に真実に反する親子関係を強制することになる」という意見がある一方、「DNAだけを基準にするなら、血縁関係のない養子縁組家庭も否定することになる」という意見も出ている。

 最高裁は、当事者の北海道の元夫婦と、これら元夫婦と同様の理由で訴訟中の別の夫婦に対し、来月17日に最終判断を下す。日本の民法には「妻が結婚中に妊娠した子は夫の子と推定する」という規定があるが、一審・二審はDNA鑑定結果を「信頼できる最新の科学技術」として受け入れ、法適用の例外と判断した。しかし、最高裁は基本的に親子関係の安定を重視してきただけに、一・二審の判決を覆し、夫が勝訴する可能性もあると日本のメディアは見ている。


東京= 安俊勇(アン・ジュンヨン)特派員、良い記事を書いてくれましたね。感謝...

関連:
平成25年12月5日,民法の一部を改正する法律が成立し,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)。この法改正と、それに先立つ最高裁の判断は正しいと思うだけど、一夫一婦制や婚姻制度はどうあるべきなのだろうか。我が国の婚姻制度は崩壊していくのだろうか。われわれの社会もフランスのような社会になっていくのだろうか。  


Posted by ecell at 09:41Comments(0)法律学習

2014年06月01日

和ネット VS 弁護士事務所

「損賠提訴:「和ネット」を提訴 弁護士『名誉傷つけられた』」という見出しで、2014年05月23日に毎日新聞和歌山版で報じられたニュースがある。しかしその後、他の大手新聞等の追いかけ記事もなく、どうなっているのか気になっていた。

詳しくは、末尾の参考情報をみていただきたいのだが、要は和ネットという匿名掲示板に書き込まれた記事が名誉棄損にあたるので、その記事を削除して、書いたやつを名誉棄損で訴えるためその情報を開示してくれというのが発端のようだ。

ところが、ネット管理者はこの案件を受けた弁護士のやり方が納得いかないと 和歌山弁護士会に懲戒請求を出した。請求は受理されたが、これにカチンときた弁護士事務所がネット管理者に対して損害賠償3300万円を払えとの民事訴訟を起こした。

以上が、だいたいの経緯だと思うが、公開されている情報を追っていくと、うまく言えないけど、匿名掲示板って何、弁護士という職業って何なのだろうかという疑問が起きてきた。そんな疑問もあってこの争いに興味を持っている。


参考情報:

毎日新聞和歌山版
http://mainichi.jp/search/index.html?q=%E5%92%8C%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88&imgsearch=off
がんばれ!和ネット!!
http://www.wa-net.net/modules/bluesbb/thread.php?thr=2516&sty=1&num=l50#p132337
和ネットに損害賠償3300万円を払えとの訴訟の訴状
http://www.wa-net.net/modules/bluesbb/thread.php?thr=2514&sty=1&num=l999#p132107
その他
http://www.wa-net.net/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=66  


Posted by ecell at 12:58Comments(0)法律学習

2014年05月21日

お休みが一日増えるかも?

国会で審議中だけど、祝日法が改正され、2年後の2016年から8月11日を「山の日」として、新たな祝日となる見通しだ。1995年に、7月20日を海の日に制定されたときから山の日の話はあったようだ。

ところで、現在我が国は「国民の祝日」が15日あるので、「山の日」は16番目の祝日になる。だから、2年後の2016年は「国民の祝日」が16日になる。祝日法が改正されれば、ここまでは当然の話だ。

で、ちょっと面白いことだが、来年2015年は珍しい年にあたる。それは祝日法の第3条3項の「その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。」という規定が適用されるのだ。

具体的には、この規定は憲法記念日(5月3日)とこどもの日(5月5日)に挟まれる5月4日を休日にして連休を作るため昭和60年に追加されたものである。その後、5月4日が祝日(みどりの日)となった後も条項自体は残されていた。

それが来年2015年に適用されるのだ。休日が一日多くなるのだ。きっと、カレンダー業界が混乱するだろうな。といっても実は2009年9月に一度この規定が適用されているそうだ。祝日法の祝日ではない休日として、前日の敬老の日と翌日の秋分の日に挟まれた日、2009年9月22日はその幸運の日となった^^

こんな風に考えていくと、山の日も8月11日などにせず、別の既存の祝日の2日ずれた日に設定すれば、もう一日休日が増えるかも...と調子のいいことを考えてしまう。

参考:国立天文台 国民の祝日と休日  


Posted by ecell at 09:18Comments(0)法律学習

2013年03月18日

六法全書に「愛」はある

かって、ある法学生が六法全書には愛や恋はない、だから、法律学は面白くない、と話していたことを覚えている。それで、ほんとうに愛や恋という言葉はないのか探した。今なら、きっとインターネットやデータベースで検索をかければ一発で探すことができるのだろう。

完全に調べてはいないが、「恋」という文字は法律で使われているのかどうかはわからないが、「愛」という文字は日本国憲法の前文で使われている。憲法前文も規範であることに違いはない。六法全書に「愛」はあったのだ。

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和をする諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。


現在、96条改正の要否が議論されているが、できれば憲法に「愛」という文字を何らかな形でも良いから残して欲しいものだ。それにしても、周辺の国家で平和を愛する国家ってどこにあるのだろうか。北朝鮮、韓国、中国それともロシア、アメリカ?

日本国憲法
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
 2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


関連情報と追記:
ブログ版 南堀江法律事務所さんによれば、愛という文字はいろんな法律で使われているようです。例えば、児童福祉法1条2項には「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、護されなければならない。」とあります。

それから、最近になって条文の文言に「恋」という文字が入る法律ができたそうです。「ストーカー規制法」(平成12年施行)です。上記のサイトで教えていただきました。

第二条  この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

蛇足ですが、以前はおかしな法律が結構ありました。例えば、前項の××は本項においては○○と読み替える、と規定があるが、前項には××が規定されていなかったという法律。まぁ、これは次の改正のときに訂正されるのでしょうが、それまでは間違ったまま六法全書に掲載されることになりますね。まったく恥さらしですが、こういうのって現在でもまだあるのでしょうかね。  


Posted by ecell at 10:22Comments(0)法律学習